「思想に自由あれ。しかしまた行為にも自由あれ。そしてさらにはまた動機にも自由あれ」
かつて、日本一自由だった男が存在した。かれの名は、大杉栄。無政府主義者。
一犯一語!投獄されるたびに外国語をマスター
大杉栄は、治安維持法違反などで、生涯に渡り何度も投獄されています。しかし、彼には、投獄生活におけるテーマがありました。一犯一語です。
投獄される度に、新しい語学をマスター、その力を活かし、アナーキズム関連の本等を読み漁り知識を深めました。
元来僕は一犯一語という原則を立てていた。それは一犯ごとに一外国語をやるという意味だ。最初の未決監の時にはエスペラントをやった。次の巣鴨ではイタリア語をやった。二度目の巣鴨ではドイツ語をちっと噛った。こんども未決の時からドイツ語の続きをやっている。で、刑期も長いことだから、これがいい加減ものになったら、次にはロシア語をやって見よう。そして出るまでにはスペイン語もちっと噛って見たい。とまずきめた。
独房の前にある檻を、遊郭の飾り窓に見立て看守を誘惑してからかって遊ぶなどの悪戯をしてストレスを発散、ロシア紙幣を偽造し大儲けして逮捕された囚人など、面白い才能を持った人物と次々友達になり人脈を広げました。
身体は拘束されようとも、頭の中は、常に自由でした。
大杉栄の獄中記はダントツに面白い
獄中物で言えば、元ライブドア社長・堀江貴文、元外務省主任分析官、佐藤優の本があります。
ホリエモンは、獄中の中で1000冊もの本を読みメールマガジンを発行し、前代未聞・獄中からの情報発信を行いました。
佐藤優は、キリスト教神学に関する資料を読み込み、それまで激務の影響で出来なかった、インプット作業に集中しました。
彼らは、獄中という、普段ぼくらが暮らしている世界とは比べ物にならないほど不自由な場所にも関わらず、有意義に生活を送っていました。
その中でも特に大杉栄は、飛び抜けて自由に生きているように感じます。
むしろ、投獄されるのを楽しみにしているのではいか、とすら感じてしまうほどです。
自由は想像力が決める
自分は、牢獄の中ににいるわけでもないのに、どうしてこんなにも不自由なのだろう。
この本を読んで、生活の行き詰まりを強く感じました。
逆に、どうして彼らは、獄中の中でも、そんなにも前向きに生きることができたのだろうか。
そのヒントは、想像力にあるのではないだろうか。
想像力さえあれば、どこにいたとしても、自由になれる。
逆を言うと、お金があったって、時間があったって、何があったって、想像力が無ければ何もできない。
想像力がないから、行き詰まりを感じてしまうのではないか。
独房の檻を遊郭の飾り窓に見立てる、大杉栄の想像力を思い出すたび、自由というのは、究極、想像力が決めることなのだなと感じます。
「人生は決して、あらかじめ定められた、 すなわち、ちゃんとできあがった一冊の本ではない。 各人がそこへ一字一字書いていく白紙の本だ。 生きて行くそのことがすなわち人生なのだ。」大杉栄